絶望のなかのほほえみ カンボジアのエイズ病棟から

後藤勝著(写真)

2005年4月刊 A5判 96頁 めこん (5%)税込:\2100 (本体:\2000)

バンコクを拠点にしてアジアを撮り続けるフォト・ジャーナリストの著者が3年にわたって撮り続けた、カンボジア・バッタンバンのエイズ病棟の写真集。

【本書「まえがき」より】
初めてティーと出会ったのは2001年だった。
 バッタンバン州リファラル病院は市内の川沿いにある。フランス植民地時代に建てられた病院の天井はやけに高く、古くて巨大な扇風機が、頭上でゆっくりと回っていた。季節は雨季がもうすぐ明ける3月。それでも時折激しいスコールが降り、病室の床は雨漏りのため、いつも水浸しになっていた。
 感染病棟には無造作にベッドが置かれ、その他設備は何もなかった。15人ほどの患者たちがいたが、動くことのできる者は中庭に出ているので、病棟内は怖いほど静まり返っていた。時折赤ん坊の泣き声が聞こえた。体が弱って動けない寝たきりの人々が、痛みを我慢しながら、じっと窓の外の景色を眺めていた。
 一番隅のベッドに、女性が1人いて、干し終わった洗濯物を1枚ずつ綺麗にたたんでいた。微笑みながら「私はティーよ」と言った。まるで枯れ木のように痩せ細った彼女は、とても29歳に見えない。ほとんどの患者がそうであるように、彼女もたった1人でエイズと闘っていた。

 

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