オリエンタリストの憂鬱 植民地主義時代のフランス東洋学者とアンコール遺跡の考古学

藤原貞朗著

2008年11月刊 46判 586頁 めこん (5%)税込\4725 (本体\4500)
ISBN:9784839602185

アンコール遺跡が世界的な文化遺産として知られるようになったのは、フランスの冒険家や考古学者による発見・採掘があったからこそ。その後、フランスがインドシナの考古学・歴史学研究をリードしてきた。一方、彼らはパリに大量の美術品を持ち帰り、西欧のエキゾチズム嗜好に合わせてデフォルメして紹介していた。背景にはフランスの植民地政策があった。気鋭の美術史研究家がパリの膨大な一次史料を渉猟し、フランスのインドシナ考古学研究史を再構築する。

【主要目次】
序章 パリの国立アジア美術館とアンコール遺跡の近代考古学史
第一章 ルイ・ドラポルトとアンコール遺跡復元の夢
 ギメ美術館の展示品とドラポルト
 冒険譚としての遺物搬送
 ドラポルトのクメール美術観
 パリにおける初めてのクメール美術展示
 クメール美術館からインドシナ美術館へ
 インドシナ美術館のレプリカ展示
 レプリカにみる19世紀末の遺跡の状況
 19世紀の復元の理想
 参道彫刻をめぐる謎
 考古学的スペクタクルと万国博覧会
 晩年のドラポルト
第二章 フランス極東学院の創設とその政治学
 初代院長の選出をめぐる謎
 草創期の極東学院の調査の実状
 日本学者クロード・メートル
 考古学的調査のための法的整備
 法制下の遺物の管理と移送
 極東学院創設の政治学
 クロノポリティクスとジェオポリティクス
第三章 本国の理念と植民地の実践のはざまで(1)―現地調査員の現実
 2枚の写真より―ヤヌスとしての東洋学者
 フランス東洋美術研究のダブルスタンダード
 現地調査員のキャリア(1)―文献学者カバトンと遺跡目録作成者ド・ラジョンキエール
 現地調査員のキャリア(2)―2人の調査員の死、カルポーとオダンダール
 現地調査員のキャリア(3)―建築家の仕事、デュフールとパルマンティエ
 現地調査員のキャリア(4)―アンコール保存局長、コマイユとマルシャル
 現地調査員のキャリア(5)―カンボジア生まれの芸術局長、グロリエ
第四章 本国の理念と植民地の実践のはざまで(2)―メトロポールの発展
 20世紀初頭のパリの東洋学事情
 パリの東洋美術史料/パリのオリエンタリスト(1)―ジョゼフ・アッカン
 パリのオリエンタリスト(2)―メトロポールの寵児、グルセとステルヌ
 グルセの東洋美術史理念
 東洋美術館の再編成(1)―ギメ美術館の変革
 東洋美術館の再編成(2)―国立美術館統合とインドシナ美術館の終焉
 東洋美術教育体制の確立―ルーヴル学院におけるアジア美術教育
 普遍主義、形式主義、そして植民地主義
 方法論的齟齬の表面化―ステルヌ著『アンコール遺跡のバイヨン』の衝撃
 ステルヌのアンコール詣で
第五章 アンコール考古学の発展とその舞台裏(1)―考古学史の中のマルロー事件
 マルロー事件と考古学史
 事件の概要
 マルロー事件に見る1920年頃の考古学の状況
 法的根拠の曖昧性と文化財保護法の改正
 法改正の舞台裏
 事件後のバンテアイ・スレイ調査
 パルマンティエの論文と「東洋のモナリザ」
 甦るバンテアイ・スレイ
 アナスティローシスと復元の思想
第六章 アンコール考古学の発展とその舞台裏(2)―現地の混乱とメトロポールの無理解
 学院の新しい顔―セデスとゴルベフ
 ゴルベフの新しい考古学の方法
 グロリエのカンボジア芸術局、美術学校、美術館
 カンボジアの伝統復興は誰のためか
 カンボジア芸術局にみる植民地政策の変化/グロリエの暗躍とアンコール考古学への影響
 学院による古美術品販売
 エスカレートする古美術品販売―欧米の美術館との取引
 近代考古学・美術史学への「貢物・供物」
 メトロポールの無理解
第七章 パリ国際植民地博覧会とアンコール遺跡の考古学
 植民地博覧会と考古学の貢献
 復元されたアンコール・ワットの象徴的意味
 マルセイユ博のアンコール・ワット
 植民地博覧会と極東学院/正確な細部が意味するもの
 極東学院展覧会
 植民地宮に見るインドシナとアンコール遺跡の表象
 植民地宮の建築様式
 ファサードの巨大植民地絵巻
 ジャニオの様式
 フレスコ装飾―中央ホールと2つのサロン
 描かれた考古学と伝統工芸
 博覧会と考古学・美術史
第八章 アンコール遺跡の考古学史と日本
 戦時下日本のアンコール・ブーム
 第2次大戦以前の日本人によるアンコール研究
 日仏会館と極東学院の連携
 第2次大戦中の日仏会館
 日仏印文化協力前夜―戦時下の極東学院の亀裂
 第1回教授交換、太田正雄
 仏印巡回現代日本画展覧会
 ゴルベフの来日講演と展覧会
 南部仏印進駐と文化協力の変化
 戦時下日本におけるアンコール遺跡の意味
 第2回教授交換、梅原末治
 セデスの来日計画
 極東学院と帝室博物館の古美術品交換
 戦時の古美術品贈与と販売
 植民地考古学の終焉と新たな悲劇のはじまり
 最後に―日本が見たアンコールの夢
終章 あとがきにかえて

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